私のシニア旅行生活
シニア旅行カウンセラーズ(STC)で活躍する組合員の実状はどうなっているかをご紹介しよう。
旅行業界専門誌のトラベルジャーナル(2006年7月10日号)に、時の話題「シニア旅行カウンセラーズの検証」として
掲載されたものから、3組合員の活動ぶりを再録させてもらった。
会社員にはできないサービスを
稲葉秀明さん(兵庫県姫路市)は、STC加入の理由を「効率を優先する会社のあり方に見切りをつけ、思いどうりの仕事がしたかった」
と話す。営利企業は結果がすべて。本来楽しいはずの旅行を売っているのに、中には売る楽しさ、喜びを忘れている社員もいる。
顧客を新規に開拓しても、効率を優先して、きめ細かな案内や代金振り込みへのお礼、帰国後の電話などをする余裕がない。
「そんな時、週刊トラベルジャーナルに載っていたSTC設立の記事を偶然見つけ、自分も独立しようと思った」。
27年勤めた日本通運旅行事業部を01年に退職した。
稲葉さんが取り扱っているのは受注型企画旅行と大手各社のパッケージツアーが中心。収入は少ないが固定客がおり、
採算も十分に取れている。日通時代に20年間、団体営業畑で培ったノウハウを活かし、営業、企画、添乗をこなす。会社組織であれば
利益を優先して旅行日程、企画、値段などを決定するが、稲葉さんがツアーを作るときは利益ではなく顧客の満足を優先するという。
「報酬はお客様に喜んでいただいた結果。会社にいてはかけることができない手間、時間、コストをかけられる。予算を気にせず自由に
旅行営業をできるのが最大の喜び」だ。
親子4世代の旅行を北川武人さん(埼玉県春日部市)は55歳でJTBを定年退職した。いくつかの旅行会社から声がかかり
、仕事を手伝ったり、知り合いと共同で旅行業をやったりと数年はぶらぶらしていたが、JTBのOB会に参加したとき長与氏と出会い、
STCを紹介してもらった。これまでも独立して旅行業をやろうと思っていたが、先輩たちが独立して立ち上げた旅行会社は店舗や
社員が負担になり苦労していたので二の足を踏んでいた。
「しかしSTCは自宅営業で店舗が要らず、経理面はのフォローSTC本部がバックアップしてくれる。
資本金や営業保証金などの負担もなく、初期投資は出資金30万円と加入手数料10万5000円。不可能だと思っていた起業が可能になった」
北川さんの自慢は、親子4世代の旅行の相談に乗ってきたことだ。海外旅行が自由化された当時の顧客から、
その人のひ孫まで4代の旅行の世話をしている。「長い間に培ってきた信頼関係を裏切らないよう、一生懸命良い商品を提供したい」
と言う。得意分野はクルーズ商品。自身も年数回、各国のクルーズ船に乗って船や航路を熟知し、
「JTBに負けない企画を作れるノウハウを持っている」と自負する。米国の旅行商品づくりにも手を広げようと、
先日、「デスティネーション・スペシャリスト」試験を受け合格。STC組合員最年長の73歳だが、まだまだ現役だ。
仕事続けたい女性の受け皿にも30代で加入した佐藤小百合さん(静岡県富士市)の
退職理由はもちろん定年退職ではない。佐藤さんの業界でのキャリアのスタートは近畿日本ツーリスト。都内の営業所で海外企画や熟年向け通販商品の企画などを経験した。実家のある静岡県内の支店で勤務した後、転職した静鉄観光サービスでは海外旅行の企画のほか、個人向けカウンター
でのセールスも担当。出産・育児で休職の後、復帰したが、「職場は残業が当たり前で、自分の仕事が終わっても帰れない雰囲気があった」。その状態に耐えかね退職した。
これからも旅行業界で仕事を続けたいと思ったが、保証金や店舗の契約など資金面を考えると1人で開業は無理。
しかし、今さら自分を受け入れてくれる旅行会社があるとは思えず、悩んでいたところに偶然、STCの情報が入ってきた。40万円で独立でき、外務員証も発行してもらえる。「もともと会社員時代も営業から手配、添乗などを全部自分でやる自己完結型の仕事が好きだった」。女性初の
組合員としてスタートを切った。
独立しても以前の会社の顧客には手をつけなかった。海外旅行好きの友達からの紹介、友達の友達からの紹介など泥臭い営業を続け、今では年に3回クルーズに参加する8人グループがいたり、上質の固定客を抱えるようになった。「お客様が求める旅行
を用意するから相見積もりがなく、利益率も高い」。05年度にはOL時代の年収を超えた。主婦のパートと考えれば、かなりの高収入だ。
「女性は結婚や出産などを機に会社から<仕事を選ぶか、家庭を選ぶか>などを暗に迫られ退職を考えるケースが多いと
思います。数年間かけて培った専門知識を捨て、家庭に入ってしまうのは業界にとって損失ではないでしょうか。STCはシニアだけでなく、旅行業を続けたい女性の受け皿にもなってくれます」